脱炭素&サーキュラーエコノミー加速へ、GXリーグ発の協業事例 ―アスエネ×サイクラーズ

2024.10.15
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GXリーグでは、企業間や官民の連携・協業を促進するため、さまざまな交流イベントを実施しています。2023年度に開催した「ビジネス機会創発の場」を通じ、アスエネ株式会社とサイクラーズ株式会社が戦略的パートナーシップに関する覚書(MOU)を締結し、協業を進めています。

企業の脱炭素経営・サーキュラーエコノミー促進に取り組む両社が、連携を通じて目指すGX事業について、アスエネ株式会社代表取締役CEOの西和田浩平氏、サイクラーズ株式会社代表取締役の福田隆氏にお話をうかがいました。


GX分野における両社の重点領域

福田氏(以下、福田):サイクラーズは、廃棄物リサイクル事業をベースとして、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現にグループ全体で取り組んでいます。最新技術を取り入れたリサイクルプロセスによって資源の再循環の最適化を促進するほか、サーキュラーエコノミーの領域について網羅的に取り組みながら、循環型社会の構築を支援しています。

サイクラーズ株式会社 代表取締役 福田隆氏

西和田氏(以下、西和田):アスエネは、クライメートテック分野のスタートアップで、脱炭素のマルチプロダクトを展開しています。現在は、企業やサプライチェーンのCO2排出量見える化のクラウドサービスを中心に、ESG評価のクラウドサービスと、カーボンクレジット・排出権取引所「Carbon EX」の運営を行っています。

アスエネ株式会社 代表取締役CEO 西和田浩平氏

事業を行う中で感じる問題意識

福田:これまでのリサイクルビジネスは処理方法などのアウトプットが不明瞭なものが多く、本当に環境負荷を低減するかどうかも不透明なままでした。また、どんなに高度な再生原料を作っても、コスト競争力に課題がありました。技術革新によってさまざまな資源の再循環が可能になり、サーキュラーエコノミーへの社会的な関心も高まっている今、その価値をもっと広めていく必要があると感じています。

西和田:日本の多くの企業では、再エネ導入や省エネの取り組みは進んでいますが、そもそものCO2排出量を把握できていない企業が多く、目標設定がしづらい状況に課題を感じていました。また、実際に排出削減のアクションを推進するには、経済的なインセンティブが欠かせません。われわれのビジネスモデルで支援・解決できる部分もありますが、もっと大きな流れを生み出すためにも、国と連携して取り組まなければいけないと考えています。

官民連携によって大きな推進力が生まれる

西和田:欧米に比べると、日本は官民連携の取り組みがまだ少ないですよね。特に、排出量削減は、民間企業だけで取り組んでも大きなインパクトを生み出せません。だからこそ、国や省庁の力が必要ですし、より多くのプレーヤーを巻き込んで連携していくことに意義があるのではないでしょうか。

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福田:実務的なところでは、国がGX実現に向けた基本方針を示したことで、法体系が変わりつつあることも大きいですね。同時に、金銭的価値とは異なる新しい価値基準が確立されてきました。官民のみならず、動脈と静脈の企業が連携して新しい資源循環システムをつくっていくという、社会的気運が醸成されつつあるのには、GXリーグが重要な役割を果たしていると感じます。

西和田: GXリーグのように、700社を超える企業が集まる官民連携の枠組みは、海外では例がありません。先駆的に取り組むことで、日本のGXモデルを海外に輸出できる可能性もあるとみています。

福田:リサイクルや資源の再循環は、事業としては古く、ベンチャービジネスが始まりづらいうえ、積極的に支援する投資家も少ない業界でした。それが、国が支援に力を入れる分野として大きく示されたことで、そういった空気も変わりつつあります。今後、新しいチャレンジが生まれやすくなるのではないかと思います。

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両社の協業を通じて目指すGX事業とは?

西和田: 現在、CO2排出量の見える化だけでなく実際に削減する取り組みの支援を行っていますが、資源循環の領域に課題を抱えるお客さま企業が多く、知見の豊富なパートナーを探していました。GXリーグのイベントをきっかけにサイクラーズと出会い、サイクラーズの持つ高度なリサイクル技術や知見と、弊社の排出量見える化サービスとを組み合わせることで、企業の取り組みがより効果的になると考えています。

福田:先ほども申し上げたように、リサイクルの環境負荷低減効果については長らく不透明で、定量化する必要がありました。われわれが作った再生原料は、それを使うユーザーにとって一番メリットがあるものでないといけません。ですから、きちんと製品を評価して一緒に普及推進してくれるアスエネと出会えたことは、非常に大きいですね。

西和田:具体的な協業の動きとしては、「アスエネ」のサービス導入企業向けに提供している排出量削減ソリューションのマーケットプレイス「アスエネストア」で、サイクラーズの商材を提示していて、まさにこれから販促活動を本格化するところです。加えて、共同ウェビナーなど、両社の専門性を生かした情報発信・啓発活動も行っていく予定です。また、将来的には、リサイクル・サーキュラーエコノミーの領域でのカーボンクレジット創出を目指していきたいと考えています。

福田:カーボンクレジットを創出できれば、トータルでコスト競争力アップにもつながりますし、循環性の高いビジネスモデルへの転換も加速するはずです。両社の協業には大いに期待しているところです。

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新規事業や協業を増やすために―GXリーグでの対話・交流の意義

福田:われわれにとって、自社の取り組みを広く知ってもらうことが重要ですから、「ビジネス機会創発の場」に登壇する機会をいただいたことは大きかったですね。GXは企業にとっても新しい領域で、部門を越えて一丸にならなければいけない。これまでの意思決定ルートではうまく進まないことも少なくありません。GXリーグのイベントは、より経営層に近い方々も参加されているので、アクションをより早く起こしやすい場になっていると思います。

西和田:私も同感です。参画企業と直接交流したり、情報発信したりする機会があることはありがたいことです。どの企業も、解がない中で取り組みを進めていますから、もっと事例を共有できるといいですよね。こうした場を通じてパートナーシップを組むことがネットゼロへの本質的なアクションだと思っているので、われわれも引き続き積極的に参加していきます。その中でも、カーボンクレジットは今後、GXの広いビジネスを支える柱になると考えています。GX-ETSの動向に注目しながら、今後もさまざまな連携を模索していきます。