非財務情報をどのようにとらえ、開示するか?
第2回GXサロンで情報交換

2024.08.02

2024年7月12日に「第2回GXサロン」を開催しました。GXリーグとして関西地域で初めてのイベントとなった大阪・中之島の会場には、 約40社の参画企業が集まり、業種を超えた交流や情報共有を行いました。


企業に対してサステナビリティ対応の圧力が強まるにつれ、非財務情報開示の重要性が急速に高まってきました。そこで、第2回GXサロンは「国内外の非財務情報開示基準」をテーマに、企業価値向上につながる非財務情報・気候変動関連開示への取り組み方について、国内外の最新動向をふまえて考える時間となりました。

開会の挨拶に立った経済産業省の竹下敬太氏は、参加への謝意を述べるとともに、GXリーグが700社以上の参画企業による、国内GHG排出量の5割を超える枠組みへと拡大していることに言及。さらに、経済産業省は7月1日付で「GXグループ」を設置し、GX政策をより強力に推進していく方針を示しました。竹下氏は、「GXリーグヘの注目はますます高まっているところ。こうしたイベントをはじめ、各社の取り組み情報を開示するGXダッシュボードのアップデートや、GX製品の社会実装を見据えたワーキング・グループの取り組みにも力を入れていく」と意気込み、GXリーグのさまざまな活動への積極参加を呼びかけました。

野村総合研究所によるプレゼンテーション

イベント前半には、「国内外の非財務情報開示における規制」に関して、野村総合研究所コンサルタントによるプレゼンテーションが行われました。

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■講演①:非財務情報開示の潮流と資本市場の期待

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 サステナビリティ事業コンサルティング部
深井恒太朗

サステナビリティへの取り組みと経営の関係性は、ここ十数年の間に大きく変化してきました。2010年代後半に関連部門による“チェックボックス(項目別)対応”から始まったものが、2020年前後からは事業計画と結びつけた取り組みへ、そしてここ1、2年は財務・非財務を一体化させたものになっています。サステナビリティが包含するテーマも拡大・深化を続けており、最近では自然資本の可視化・開示の動きが活発化しています。開示項目が追加され、企業側の負担が増す流れにある今こそ、「情報開示の位置付けをあらためて確認するタイミングではないか」と深井氏は指摘します。

「そもそも非財務情報は、企業価値向上に向けて投資家との適切な対話を生むためのツール」と深井氏。2000年代以降、非財務情報の重要性は急速に高まり、時価総額に占める無形資産の割合は90%に上るというデータもあることから、「無形資産を適切に可視化できないと、企業価値を正当に評価しにくく、市場からはリスクとみなされてしまう。企業の変化や成長を促すためにも適切な開示が必要」と述べ、各企業が「守り」と「成長」のための要素を自社で整理することが重要だとしました。

サステナビリティへの取り組みが企業価値に影響するかについて、深井氏は、ESGスコアの上位企業と下位企業のPBR(株価純資産倍率)を分析した結果を紹介。「良い取り組みと開示ができている企業は資本市場でも評価され、企業価値向上に好影響を及ぼしている可能性が高い」との見方を示し、あらためて適切な非財務情報開示の重要性を伝えました。

■講演②:気候変動関連情報開示の対応

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 サステナビリティ事業コンサルティング部
大向望

サステナビリティ情報開示に関しては、義務化の動きが着々と進んでいます。初めての国際開示基準として2023年6月に正式発効したIFRS(国際財務報告基準)S1・S2号については、早ければ2027年3月期の有価証券報告書から、EUの開示指令であるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)については、早ければ2026年度報告から開示が求められる状況にあります。これらの開示規則への対応のポイントとして大向氏が指摘するのは、要求事項の共通点と相違点を正確に把握することです。IFRSの中でも気候変動に特化したS2号は、「すでに多くの企業が対応しているTCFDを強化する形で基準が定められており、より具体的な説明が求められる。まずはTCFDを細かく見直した上で対応を考える必要がある」と大向氏。また、IFRSとCSRDには共通する要求事項もあるため、新たに対応すべき点を整理し、猶予期間を踏まえながら方針を策定していくことが大切との見方を示しました。

欧州では現在、IFRSと、CSRDの報告基準となるESRS(欧州サステナビリティ報告基準)との対応関係の整理が進められています。大向氏は、CSRDの適用対象企業にとって重要なポイントとして、独自の開示要件が必須なのか任意なのかを把握することを挙げ、「英文のshall disclose(必須)、may disclose(任意)、shall consider(要考慮)のニュアンスを確認し、必須の事項に対応する方針で取り組むのが効率的」としました。

IFRSは順次、S3、S4として各カテゴリの開示基準が開発されていく予定であり、それに応じてさまざまなルールへの影響も考えられます。開示にただ対応するのではなく、自社の成長や持続可能性を見直す機会としてとらえるべきと大向氏は述べ、時間をかけて対応していく必要性を訴えました。

参加者同士のグループ&フリー交流会

質疑応答ののち、グループ交流の時間へ。テーブルごとに、自己紹介をまじえながらGXサロンに参加した目的や日々感じている課題などについて意見を交わしました。およそ15分と短い時間でしたが、会場は徐々に打ち解けた雰囲気に包まれました。

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その後、会場内に「非財務情報開示規制対応」、「企業価値と非財務情報開示」、「テーマを問わない自由な交流」のテーマ別にエリアを設け、フリー交流会の時間を設けました。講演者や経済産業省のメンバーを交えて積極的に意見を交わしたり、率直な問いかけをしたりするだけでなく、グループ交流から引き続きディスカッションを行う様子も多くみられ、さまざまな形で交流を深めることができたようです。

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90分のプログラムはあっという間に終了を迎え、第2回GXサロンは盛況のうちに幕を閉じました。イベント後のアンケートには、「普段なかなか会うことのない関西企業の方々と交流する貴重な機会だった」、「業種の異なる参加者の思いや悩みを共有できた」、「環境規制が強まる中、課題があることは環境ビジネスへの注力につながると感じる」といった声が寄せられ、多くの参加企業にとって有意義な時間となったようです。