スタートアップからのGX調達加速へ!第4回ビジネス機会創発の場で活発に議論

2024.04.12
スタートアップからのGX調達加速へ!第4回ビジネス機会創発の場で活発に議論

2024年3月8日に「第4回ビジネス機会創発の場」が開催されました。本イベントは、事業創発を目指してGXリーグ参画企業とスタートアップが交流を行うもので、第4回は「スタートアップからのGX調達」をテーマに開催。スタートアップとの連携・調達に関心のある企業と、関連スタートアップの代表者がイイノカンファレンスセンター(東京・霞ヶ関)に集まり、ディスカッションを行いました。


テーマ設定の背景には、GXに関連した製品・サービスをスタートアップから調達する事例を増やすことで、この領域の市場拡大や、新たなビジネスの創発につなげたいという考えがあります。一方で、実際の調達には社内外にさまざまなハードルがあることも想定され、思うように進まない悩みを抱える担当者の方々も多いのではないでしょうか。

今回は、実際にGX関連製品・サービスの調達に成功した企業から、日本郵政とロッテの2社が登壇し、どのように社内での合意形成を得たのか、調達だけでなくPRやマーケティングとどのように連動させているかなど、成功のポイントを紹介しました。

GX領域におけるスタートアップとの連携事例紹介

日本郵政

日本郵政の關祥之氏
日本郵政の關祥之氏

「地域生活・地域経済」をサステナビリティ重要課題のひとつに掲げる日本郵政では、全国に約2万4000の郵便局を持つ日本郵便のGHG排出量がグループ全体の9割超を占めています。配達車両のEV化を進め、都内では二輪車の約4割、四輪車の約5割をEV化していますが、配達後の充電時間帯がエリア電力使用量のピークに重なり、コストだけでなく電力需給にも影響を及ぼしていることが課題でした。

そこで、2021年末に東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)の紹介を受けてエネルギーテックYanekaraと連携し、EY充電コントローラー「YaneCube®︎」を使った遠隔自動充電制御のPoCに取り組みました。その結果、郵便局全体の電力使用コントロールに成功し、エリアの電力使用ピーク時での電力使用量の抑制にもつながりました。同社サステナビリティ推進部長の關祥之氏は、「製品機能がシンプルでわかりやすく、かつ低コストだったことから、事業部門・コーポレート部門への説明や調整がしやすかった」と、調達実現のポイントを挙げました。PoCの成果を受けて、2024年には大規模、小規模それぞれの郵便局に最適化した体制で実証を進める計画です。

スタートアップとの連携にあたっては、提案と現実とのギャップや、企業文化の違いによるコミュニケーションの難しさに加え、想定外の展開が数多くあると關氏。「そのような中でも軌道修正しながら最後までパートナーとして伴走してくれるかどうかが重要」と述べ、 コミュニケーションの“翻訳者”となる存在や、サポート企業を交えた体制づくりが、より円滑に連携を進めるカギになるとしました。

ロッテ

ロッテの飯田智晴氏
ロッテの飯田智晴氏

ロッテは、プラスチックの資源循環に貢献するため、「ロッテ プラスチック基本方針」を掲げています。同社におけるプラスチックの持続可能な使用に向けては、パッケージが多種多様で回収・リサイクルが進みづらいことや、代替包材が普及途上のため高コストであることなどの課題があります。そこで、自社の代表商品「キシリトール」ブランドで3Rの取り組みに力を入れて、試行錯誤を行っています。

その一環として、グローバルに展開する循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」に参画し、リユースの取り組みを推進。新たにステンレス製ボトル入りの商品を販売し、2021年5月から首都圏にある19のイオン大型店舗で使用済み容器を回収して、洗浄・再利用のサイクルの検証を行っています。同社サステナビリティ推進部企画課長の飯田智晴氏は、実証実験的なスモールスタートが可能でチャレンジしやすかったことを参画理由に挙げ、「個社で実施するのは難しい事業。社会的意義のある先進的な取り組みに参画することで社内外から注目され、ブランド価値醸成にもつながった」と振り返りました。

スタートアップに期待することとして、自治体や他社を巻き込む力を挙げた飯田氏。脱プラスチックの問題は1社単独で乗り越えることは不可能であり、「資源循環など特にスケールが重要な事業では、同業他社と共同で取り組むことが大事。体制構築はスタートアップの求心力に期待したい」と締めくくりました。

パネルディスカッションで率直に意見交換

プレゼンテーションの後、東京大学 FoundXの馬田隆明氏をモデレーターに迎え、登壇2社と経済産業省 産業技術環境局環境政策課の太田優人氏によるパネルディスカッションを実施。ウェブコミュニケーションツール「Slido」を使ってオン・オフ両ラインから募集した質問を取り上げながら議論を行いました。

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馬田氏(以下、馬田):まず最初に、登壇企業のお二人は、互いの発表を聞いて、社内の取り組みについてどんなところが共通していると感じましたか?

飯田氏(以下、飯田):關さんがお話しされた悩みは、身にしみることばかりでした。サステナビリティ部門が担当するのは社会課題に関わるものが多く、リスクを指摘する反対意見が自社の既存事業部門からたくさん出るのですが、まずは実験的にやってみることが大事。サステナビリティを旗印にすることで、社内の協力を得やすくなるという実感もあります。

關氏(以下、關):まずはやってみる、というのは同感です。実際に取り組んでみると、生活者もこうした取り組みを求めているというのが大きな発見でした。リスクなどのマイナス要素を抑えることも重要ですが、それ以上に共感の輪が生じるというプラス要素も大きいので、その輪をどう広げるかを考えていくことが大切だと思います。

モデレーターを務めた東京大学 FoundXの馬田隆明氏
モデレーターを務めた東京大学 FoundXの馬田隆明氏

馬田:2社の取り組みからさまざまな課題が挙がりましたが、こうしたGX調達事例を増やすためにどのような政策を行っているのでしょうか?

太田氏(以下、太田):2社のお話をうかがって、政府の現状認識と皆様が経験されている実態とが違うところもあり、大きな政策方針だけでなく、その実行の段階でで改善余地があるように感じました。ひとつは、スタートアップ支援における企業選定・審査の在り方です。GX領域は、単にTRL(技術成熟度)が低いといった供給側の課題だけでなく、グリーンな価値に係る需要側の課題も大きいので、技術特性だけでなく、その技術が市場リスクを乗り越えられるかという観点で評価することが重要だと感じています。

もうひとつ、GX領域で一区切りにしてしまうのではなく、需要側視点での分析によって、スタートアップを必要とする分野を類型化し、それらに応じた支援策を実行していく必要があると感じました。みなさまからいただいた示唆を基に、GXという目標からバックキャストした形で支援の在り方を見極めていきたいと考えています。また、新技術の開発・実装に取り組むスタートアップと事業会社との連携に向けて、そのイニシャルコスト・リスクをどう乗り越えるかといった点についても、政策的な後押しを検討する余地があるように感じました。

経済産業省の太田優人氏
経済産業省の太田優人氏

馬田:需要側としては、どんな情報があるとスタートアップとの連携・調達を検討しやすくなるでしょうか?

:社内を説得しやすくする「お墨付き」があるといいですね。Yanekaraとの連携はIPCの提案がありましたし、別の事例では初期段階をコンサルタントがプロボノとして一緒に取り組めるということで社内合意が進みました。最初の一歩の部分については、事例を集め、定型化して広く発信できれば、もっと連携が進むのではないでしょうか。

飯田:当社のLoop参画も同様で、東京都の事業に採択されているビジネスモデルだったことが、ひとつの安心材料になりました。

太田:国の補助金を受けることもお墨付きのひとつになると思いますが、支援事業の進捗・事業価値が見えづらくなっている点が課題だと考えています。評価基準や事業の進捗を可視化していくために補助以外も含めた施策を検討していく必要があると考えています。

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馬田:実際に調達を決定していく上で、企業間連携を通じて解決できそうなことはありますか?

飯田:競合他社との連携は難しいところも多いのですが、社会課題が大きな追い風になると思います。

:物流業界はScope 3の排出量把握と削減は喫緊の課題であり、競合他社とぜひ取り組みたいと思っています。一方で、業界としてあるべきエコシステムがなかなか描けず、開示すべきデータにも悩んでいます。この点は、スタートアップも共同でビジョンを提示すると関係者の議論や連携が進むのではないでしょうか。

太田:企業単独の取り組みでは解決できないのは、どの業界にもいえることです。共通基盤として連携すべきところは特定していくべきですし、政府の中立性を生かせるところは積極的に動いていきたいと考えています。GXリーグのルール形成は、そうした意味でも重要性を増していると思います。

馬田:今後、連携や調達を推進するには、PoCや実証実験で終わらせずに、取り組みを重ねていくことが不可欠です。政府としてはどのように支援していく考えでしょうか?

太田:企業とスタートアップのよりよい連携のためにも、政策の中身に加えて、政府の執行体制を変えていかなければならないと思っています。みなさまとこの場で具体的に議論させていただき、今後の検討につなげていきます。

スタートアップとの連携推進に向けた課題と解決策を真剣議論

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オンライン配信終了後、会場ではテーブルごとに分かれてグループディスカッションを行いました。GX領域の製品・サービス調達における、パートナー探索、コンタクト、条件検討、社内合意、契約・調達開始の各ステップで生じる課題を付箋に書き、ワークシートに貼りながら、解決に向けたアイデアを出し合います。調達側(需要側)とスタートアップが同じグループとなって、それぞれの視点から経験談を交えた率直な意見を交わしました。

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グループディスカッションには、経済産業省の担当者もメンバーに加わり、実務者のリアルな声に耳を傾けながら、政策支援で解決できそうな点について積極的に情報交換しました。会場はなごやかな雰囲気ながらも、活発に意見が飛び交い、およそ30分のディスカッションはあっという間に終了の時間を迎えました。

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ディスカッションの締めくくりとして、各テーブルで議論した内容を全体で共有。発表では、次のような意見が挙げられました。

次年度の構想

経済産業省の竹下敬太氏
経済産業省の竹下敬太氏

閉会のあいさつでは、経済産業省の竹下敬太氏が登壇し、参加への謝意を伝えるとともに、来年度の連携支援の構想を説明。「今年度は既存スタートアップとGXリーグ参画企業のマッチングに重きを置いていたが、来年度はもう一歩踏み込んで、GXリーグ参画企業のニーズが高い分野において、スタートアップが多く創出されるような仕掛けを施したいと考えている」と示しました。「GXリーグにおいて特定の分野における具体的な製品需要をGXリーグ参画企業間の議論を通じて明らかにすることで、スタートアップにとっての新規事業としての成立確度と、資金調達のしやすさを高め、その結果需要家が求める製品が生み出されるという好循環に繋げていきたい」と竹下氏は力を込め、具体化に向けて積極的な対話を呼びかけました。


2024年度のGXリーグは、ビジネス創発に向けた取り組みをさらにパワーアップさせていきます。交流イベントも継続的に開催する予定ですので、今後もぜひ積極的にご参加ください。