2022年9月29日、第2回GXスタジオを開催しました。
GXスタジオは、賛同企業のみなさまが互いを知り、自由に対話する交流の場としてスタート。2回目となる今回は、GX実現に不可欠なイノベーションの中でも特に関心が高い「クリーンエネルギー」がテーマ。オンライン・オフライン合わせて100社以上が参加し、その開発や技術浸透について議論する場となりました。
ヒアリングをもとに課題を共有
イベントに先立ち、参加者から事前にヒアリングした内容からは、課題として大きく2点が挙げられました。
- 社会的意義と経済合理性の両立
- 実務との乖離、知識不足、導入へのハードル
このほか、「クリーンエネルギーは本質的な脱炭素につながるのか?」といった疑問も投げかけられ、エネルギー転換の難しさが浮かび上がります。
こうした課題を念頭に置きながら、神戸製鋼所、JERA、東京ガス、出光興産、日本航空の5社がプレゼンテーションを行い、各社の取り組みを紹介しました。
賛同企業によるプレゼンテーション
神戸製鋼所
神戸製鋼所は、兵庫県の高砂製作所で水素エネルギー開発の調査事業を推進しています。太陽光エネルギーによる水電解と液化水素の2つの水素供給ソースを活用し、「つくる」と「つかう」の両方を持つ、ハイブリッド型の水素エネルギー供給システムを開発中です。
新事業推進本部 技術部部長 水素WGリーダーの野一色公二氏は、どのようにして水素を安定的かつ安価に供給していくかが重要な課題であるとし、「実証することがディスカッションの始まりになると思う。手探りではあるが、グループ一丸となって“守り”と“攻め”の両面で取り組みを続けていきたい」と述べました。来年度には調査結果を順次公表するとともに、プランやモデルを構築して外部へ提供していきたいとしています。
JERA
2020年10月に「JERAゼロエミッション2050」を公表したJERAは、再生可能エネルギーの導入拡大とともに、水素・アンモニア混焼等によるゼロエミッション火力の拡大に取り組み、2035年度までにCO2排出量を2013年度比で60%以上削減することを目標に推進しています。
愛知県にある碧南火力4号機において、アンモニアを20%混焼する実証試験を2023年度までに、また、碧南火力5号機や他の石炭火力において50%以上混焼する高混焼試験を2028年度までに実施し、それぞれ商用運転開始を目指しています。
同社は、クリーン燃料の製造・輸送と普及拡大に向けた取り組みも進めており、企画統括部 脱炭素推進室の濱本晋課長は「アンモニアは発電用燃料としてのみでなく、船舶用および産業部門での燃料としての利用の可能性を備えており、相互利用による効率的な連携が図れるのではないかと考えている」と話しました。
東京ガス
東京ガスは、自社が関わるCO2排出量約4,000万トンのうち、顧客である生活者が排出するCO2が大部分を占めていることから、いかに生活者のCO2削減に貢献するかをKPIに掲げています。
脱炭素の取り組みとしては、省エネ機器導入による使用効率向上に加え、燃料転換への動きも強化。2019年から、共同開発した「カーボンニュートラルLNG」を販売するほか、水素と二酸化炭素からなる合成メタンの熱エネルギー化に向け、研究施設での実証を始めています。
同社ではさらに、コーポレートベンチャーキャピタルを設立し、国内外で連携を始めています。総合企画部 エネルギー・技術グループの岩田哲哉グループマネジャーは、「GXは国内の温室効果ガス削減だけでなく、事業活動全体の取り組みが評価されていくべき。GXリーグが先行的に連携していける場となってほしい」と期待を寄せました。
出光興産
「CNX(カーボンニュートラル・トランスフォーメーション)構想」を掲げる出光興産は、エネルギー・マテリアルトランジション(エネルギー源や素材の転換)に向けた開発を進めています。なかでも、バイオマスを用いたSAF製造を通じて、海外輸入に依存せず国内の生産体制を構築することを目指しています。実現にはバイオエタノールの調達が課題であることから、GXリーグにおける連携に期待したいとしています。
このほか、排ガスなどを利用した合成SAF製造に向けて、複数社協働での検討を始めています。「現時点では原料を限定せず、可能性のあるものを広く検討していきたい」とCNX戦略室 CNX企画課の𠮷田雄亮氏。同社は「責任ある変革者」をビジョンに、サプライチェーンの構築と地域社会への貢献を目指していく計画です。
日本航空
日本航空では、省燃費機材への更新・運航の工夫・SAFの3つを軸に、グループ全体で脱炭素の取り組みを進めています。なかでも、SAF調達は国内外でそれぞれ進めており、海外ではワンワールド アライアンスメンバー航空会社との共同調達を行い、国内では定期便に国産SAFを搭載。古着を原料とした国産SAFの製造にも取り組み、そのSAFを搭載したフライトを実現しました。
ESG推進部 企画グループの平野佳アシスタントマネジャーは、需要側のSAFの利点としてインフラを変えずに搭載できることを挙げ、「島国である日本は、陸路だけでなく航路移動の重要度も高いため、航空ネットワークを維持していく必要がある。国産SAF製造への挑戦を通じて観光立国の実現にも貢献していきたい」と述べました。
また同社は、関連企業とともに「ACT FOR SKY」を立ち上げて普及活動にも力を入れており、「個社での取り組みには限界がある。国、航空業界、産業界の3つの連携が不可欠」としています。
領域ごとに分かれてグループディスカッション
イベント後半では、「水素利活用」「水素製造」「アンモニア利活用」「合成燃料・メタネーション」「SAF製造・利活用」の領域ごとに小グループに分かれ、会場とオンラインそれぞれでディスカッションを実施。「各領域において、イノベーションを加速(開発・浸透)するには?」をテーマに議論しました。
登壇企業も加わってのディスカッションは、現実的な課題を話し合ったり、踏み込んだ問題提起をしたりする場面も多く見られ、白熱した様子でした。
約20分間のディスカッション後、会場では話し合った内容の一部を全体共有したほか、オンラインセッションではチャット形式で報告。さまざまな課題はありながらも、共通した危機感が横の連携を生み出すきっかけになること、需要側・供給側それぞれの意見を交えて共創していくことが重要なことを再認識し、有意義な時間となりました。
経済産業省の橋本翔汰氏は、「イノベーションは気候変動のリスクではなく、ぜひ成長の機会として考えていただきたい。政府もイノベーションを重視していて、規制と支援を一体型で進めていく。ぜひ意見交換させていただき、みなさんと創り上げていければ」と締めくくり、スタジオは閉会。その後も会場では交流が続き、オンラインでもディスカッションが継続されるなど、熱気にあふれたイベントとなりました。
GXスタジオは、業種や既存の枠組みを超えた出会い・アイデア創発のきっかけとなるよう、今後もテーマを変えながら月1回程度開催していきます。次回は10月末の開催を予定しています。