「GX価値指標」をテーマに第2回GXスタジオを開催

2026.03.13

2026年2月19日、第2回GXスタジオをオン・オフラインのハイブリッド開催で行いました。
GXリーグ参画企業同士の情報共有や交流を目的として2022年度から継続してきた同イベントは、今回で通算18回目。次年度からGXリーグの枠組みが変更されるのに伴い、今回が最後の開催となりました。
第2回のテーマは「GX価値指標」。GX需要創出のためには、率先してGXに取り組む企業や製品・サービスを適正に評価し、削減の成果を付加価値として活用していくことが必要です。国内外でルール整備が進む中、同テーマに高い関心を寄せる多くの参画企業が参加し、対話を通じて課題や知見を共有しました。


経済産業省 GXグループ 環境経済室の増田晶氏は、開会にあたり、初年度から開催してきたGXスタジオが、参画企業の関心テーマをもとに業界を超えて議論・交流する場として機能してきたと振り返りました。参画企業を対象としたこのような活動は、2026年度より、GX推進機構の下で新たに立ち上げる「GXフューチャー・コンソーシアム」の一部「GXフューチャー・リーグ」内で引き続き企画を行う方針です。コンソーシアム説明会への参加を呼びかけた増田氏は、「次年度からは新しい形で、GXの取り組みをさらに進展させていきたい」と、GX推進の歩みを次の段階へつなげていく考えを示しました。

経済産業省 GX推進企画室によるプレゼンテーション

省庁プレゼンテーションでは、経済産業省 GX推進企画室の高山大地氏が登壇し、「GXをめぐる情勢とGX需要創出施策」をテーマに、GXを取り巻く国際潮流と、GX製品市場創出に向けた政策の方向性を示しました。

AI・データセンターの拡大などによる世界的な電力需要急増を背景に、GXはエネルギー・トランジションだけではなく、エネルギーの安定供給、供給力拡張の意味でも重要視されるようになっています。また、IEA(国際エネルギー機関)の報告書ではマルチパスアプローチの重要性が明記され、欧州でも内燃機関車の新車販売禁止方針の見直しが進むなど、国際社会でも現実的な移行戦略にシフトしています。金融機関や有識者の間でもエネルギー安定供給・経済成長・脱炭素の同時実現という、日本が当初から目指してきたGXに対する評価が高まっていることを受け、高山氏は「他国に先駆けて進めてきたことを強みに、今後いっそう世界をリードできる取り組みにしていきたい」と意気込みました。

2025年2月に策定した「GX2040ビジョン」でもGX市場創造の重要性が明記され、GX製品・サービスの需要創造支援を拡大していく方針が示されています。需要創出政策については、「組織やプロジェクト単位で価値を創出するのに加え、製品そのものにGX価値を付与して、市場で評価される仕組みを構築することで、企業がGXに向けた取組にかかる追加的なコストを回収できるようにしていく必要がある」と高山氏。GX価値指標を用いて需要家側へのインセンティブにつなげ、市場創造・拡大を図っていく考えを示しました。

需要創出に向けた政策は大きく2点です。1つはGX価値の見える化で、CFP算定の業界別ルール策定支援や「削減実績量」のガイドライン整備を進めています。2つ目はGX・製品サービスの積極調達です。GXリーグにおけるGX率先実行宣言の枠組みや、公共調達でのグリーン購入方活用、公共工事での試行的なGX資材活用などを通じて、需要の下地をつくる計画です。「業種別にもさまざまな施策を検討しているところ。引き続き、みなさんと共に需要創出に向けた取り組みを進めていきたい」と高山氏は述べ、今後の活動への積極参加を呼びかけました。

みずほフィナンシャルグループによるプレゼンテーション

参画企業によるプレゼンテーションには、みずほフィナンシャルグループが登壇し、金融の視点から見る「削減貢献量」のGX価値と活用意義について講演を行いました。

2026年に国際電気標準会議(IEC)にて規格化された「削減貢献量」は、GXリーグが基本方針を示し提唱してきたGX価値指標であり、企業が提供するソリューションを通じて社会全体の排出削減にどれだけ貢献したかを定量化するものです。従来のスコープ1〜3排出量が“自社の排出”を測るインベントリ会計であるのに対し、削減貢献量は“社会へのインパクト”を測るインターベンション会計であり、概念が異なります。同社サステナビリティ企画部の山我哲平氏は、「GHG排出量では評価に限界がある“ポジティブ・インパクト”や“気候関連機会”を評価する指標になりうる」と指摘。WBCSDによるガイダンス改定のほか、GHGプロトコルの改訂、金融機関による国際的な炭素会計パートナーシップ・PCAFによるスタンダードの算定対象拡大など、グローバルな枠組みの整備が進む見通しで、「企業と金融機関双方の取り組みが加速し、削減貢献量の開示が増えていくのではないか」との見方を示しました。

削減貢献量の算定・開示は業種ごとに特徴があることから、業種別ガイダンスの策定が進んでいます。しかし現時点では削減貢献量データのプロバイダがほとんどなく、金融機関は各企業の開示資料から収集しなければならないのが足下の課題です。山我氏は、削減貢献量を開示する日本企業の増加に言及しつつ、世界でも先進的な情報基盤であるGXダッシュボードを通じた開示の進展に期待を寄せます。

年々厳格化するサステナビリティ情報開示について、「機関投資家目線での“開示のための開示”になっているのでは」と山我氏。規制対応への苦労に理解を示しつつも、本来は資金調達につながる戦略的な開示であるべきだと指摘します。これに関し、同社は独自の評価モデルを活用した「Mizuho削減貢献量インパクトファイナンス」を開発。11の評価項目にはGHG排出量に加え、削減貢献量の開示状況や第三者検証の有無を設定し、環境省の「インパクトファイナンスの基本的考え方」にも適合しているほか、ファイナンス実施時における企業のコストや負担の軽減にも配慮した商品設計となっており、企業の資金調達ニーズに対応しながら削減貢献量の普及・促進に貢献していきたい考えです。

削減貢献量は、株式投資家に加えて、社債投資家や銀行とのエンゲージメントにおいても注目テーマとなっています。「インパクト、トランジション、機会評価まで、さまざまなテーマで横断的に活用できる」と山我氏は述べ、成長指標として企業評価や金融に結びつくものになりつつある削減貢献量の活用可能性に期待を示しました。

グループ交流で気候変動情報開示に関する問題意識を共有

短い休憩ののち、会場ではテーブルごとに業種・職位の異なる4、5人のグループに分かれ、ディスカッションを実施しました。

ディスカッションのテーマは「GX価値指標に関する問題意識」。自社・自業界で現在顧客に訴求しているGX価値や、それに対する顧客・ステークホルダーからの反応、今後訴求していきたいGX価値の項目・コンセプトについて、それぞれの意見を交わしながら議論を深めます。

参加者のみなさんは、自社の方針や目下進めている開示について、具体的な課題を挙げながら紹介。すでに削減貢献量を開示している企業からの参加者に取り組みの状況を尋ねたり、実務上の難しさについて解決の糸口を探ったりと、真剣に対話を広げる様子が見られました。異業種の情報や最新動向にも触れ、視座を高める有意義な時間となったようです。


イベントの締めくくりとして事務局の佐藤よりあいさつを行い、GXスタジオが最終開催となることをあらためて報告するとともに、参加への謝意を述べました。「最終テーマである『GX価値指標』は、GXリーグのワーキング・グループで議論を重ねてきた削減貢献量や削減実績量の成果を象徴するものであり、一定の貢献ができている領域では」と振り返り、GX価値指標のねらいであるGX需要創出を目指す次年度からの活動にもつながる、最終回にふさわしい交流の場となりました。