SGSジャパン株式会社
1. 貴社の強みや実績について教えてください
SGSは、スイス・ジュネーブに本社を置き、試験・検査・検証・認証に関するサービスを提供する、業界で世界最大級のリーディングカンパニーです。設立から約145年の歴史を持ち、世界中に約10万人の従業員と2,500ヶ所以上の拠点を展開し、グローバルに事業を展開しています。日本国内では、SGSジャパン株式会社が、各国の拠点と連携しながら、お客様のニーズに応えるべく幅広いサービスを提供しています。
近年、SGSが特に注力しているのがサステナビリティ分野です。気候変動、サーキュラー(資源循環)、ネイチャー(自然保護)、ESGアシュアランスの4つの領域において、各業界に精通した専門家が、企業価値向上と市場競争力の強化を支援する多様なサービスを提供しています。
中でも、国内外で対応ニーズが高まっている気候変動の分野では、GHG排出量検証、CFP(カーボンフットプリント)検証、EPD(環境製品宣言)検証、LCA(ライフサイクルアセスメント)算定支援、CBAM(炭素国境調整措置)などの規制対応支援を通じて、企業のカーボンニュートラル実現にむけた取り組みを包括的にサポートしています。
GHG排出量の検証については、日本国内でいち早くサービスを開始し、ISO 14064-3やGXリーグなど、様々な検証基準に対応した豊富な検証実績を有しています。また、GHG排出量にとどまらず、企業が開示する環境データ(水、廃棄物、大気汚染物質など)や社会性データ(管理職比率、労働災害度数率、育休取得率など)に対する検証も実施し、企業のサステナビリティ情報開示を支援しています。
SGSは、サステナビリティに関する国内外の最新動向や法規制に関する深い知見と、各業界の現場に精通した検証員の専門性を活かし、企業のGHG排出量の算定・報告の信頼性向上に貢献しています。
2.排出量の検証の今後の展望についてどのように考えているか教えてください
■企業単位のGHG排出量と情報開示の動向
企業の価値向上やESG投資の観点から、国内外でサステナビリティ情報開示に関する規制の整備が加速しています。欧州では企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が導入され、国際的には国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がグローバルベースラインとなるISSB基準(IFRS S1・S2)を発行しました。これを受け、日本国内でもサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月にSSBJ基準を制定しており、今後は適用時期や保証制度に関する議論が進む見込みです。これらの動向から、対象企業にはサステナビリティ情報の中核としてGHG排出量の開示が求められていくことは確実といえるでしょう。
このように、法規制や基準が国際的に整備される中で、企業はそれぞれの基準に適合した信頼性の高いGHG排出量の算定・報告を行うことが不可欠です。さらに、GHG排出量削減という最終目標の達成に向けては、Scope 3(サプライチェーン全体)の排出削減が鍵となります。そのため、直接的に規制対象でない企業であっても、取引先やサプライヤーが規制対象となることで、GHG排出量の算定・報告が求められるケースが今後ますます増えると考えられます。
■製品単位のGHG排出量(カーボンフットプリント)の動向
近年では製品単位でのGHG排出量であるカーボンフットプリント(CFP)に対する検証ニーズも急速に高まっています。日本国内では、環境省・経済産業省や各業界団体によるガイドラインの整備や、削減貢献量の検討が進められています。
欧州ではCFP開示が法規制レベルで進展しています。EUバッテリー規則では、バッテリー製品に対するCFPの算定と申告が義務化されています。また、エコデザイン規則(ESPR)では、すべての製品を対象としてエコデザイン要件の枠組みを定め、CFP情報を含む製品データを一元管理するためのデジタル製品パスポート(DPP)の導入が進められています。
このような国際的な潮流を踏まえると、企業単位のGHG排出量に加え、製品単位のCFPの算定、検証もますます重要になるでしょう。
3.検証を受けるにあたっての心構え、合理的保証を受けるにあたって準備しておくべき事項について教えてください。
GX-ETSにおける合理的保証では、排出量データ算定結果の正確性を高い水準で求められます。検証では、企業が算定した排出量データについて、適切性・安全性・一貫性・正確性・透明性の観点、制度ガイドラインへの適合性を確認します。
そのため、算定データの正確さに加え、組織全体の統制が不可欠です。具体的には、以下の体制整備が求められます。
- ・算定データの管理とチェック体制の構築
- ・関係者への教育と制度理解の浸透
- ・対象事業所の状況把握と現場対応力の確保
合理的保証は、将来的な排出量取引を見据えた検証であり、企業の信頼性や競争力に直結します。
検証機関として、SGSは制度要件に基づく厳格なプロセスを通じ、各社の取り組みを確実に裏付けます。十分な準備を整えることで、検証の円滑化と制度適合性を確保し、GX-ETS対応における企業の信頼性を強化することが可能です。