株式会社商船三井
1.策定されている環境関連・削減目標について教えてください
海上輸送を中心とする総合輸送グループである当社のGHG排出の多くはScope1であることから、Scope1を中心に排出削減に取り組んでいます。そのうち国内排出については、フェリー・内航RORO船事業が占める割合が高いことから、同事業を中心にGHG削減に取り組んでおり、その一環としてフェリー・内航RORO船事業を運営する(株)商船三井さんふらわあと共にGX-ETSへの参加を決定しました。
GX-ETSにおいては、2030年度までに2013年度比で19%の削減目標を設定しています。
この数値は政府が全産業平均の目標として定めている46%と比べると低く見えるかと思いますが、内航海運においては、船舶における物理的な制約や投資余力の小さい小規模事業者が多いなど、特有の事情を考慮し、国土交通省が「2030年度までに2013年度比で▲17%削減」というCO2排出削減目標を提示しています。これには、船舶による輸送自体が陸上輸送と比べてエネルギー効率がよく環境にやさしいことも考慮されています。
当社グループのGX-ETS目標はこれを上回るものであり、この達成に全力を挙げて参ります。
商船三井グループは、2050年までにグループ全体でのネットゼロ達成を目指しています。そのための指針である「商船三井グループ環境ビジョン2.2(2023年4月公表)」においては、2050年までの削減経路や具体的な削減施策、及び2050年までの中間マイルストーンなどを示しています。これにより、2050年ネットゼロ達成の実効性を高めています。フェリー・内航RORO船分野でも上記目標達成に留まることなく、GHG削減効率を継続的に高めていきます。
2.自社の環境関連・削減目標の達成に向けた取組について
教えてください
当社グループでは、GHG排出削減の具体的な施策として、①低・脱炭素燃料への移行、再エネ電力の積極導入、②風力による船舶推進システムなど省エネ技術の導入 ③効率的な船舶オペレーション ④ネガティブ・エミッションへの取り組み ⑤クリーンエネルギーサプライチェーンや洋上風力発電関連など低・脱炭素事業の拡大に取り組んでいます。
一例としてGX-ETSの主たる対象であるフェリー・内航RORO船事業での取り組みをご紹介します。
商船三井さんふらわあは2023年に日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」の2隻を就航させました。LNG燃料の使用により、従来船が使用する重油燃料と比較して、二酸化炭素(CO2)を約25%、硫黄酸化物(SOx)を約100%、窒素酸化物(NOx)を約85%排出削減することができます。
内航業界ではこれまでのところ、港湾におけるLNG燃料供給インフラが整備されておらず、フェリーへの供給事例もない中、商船三井グループとして培ってきた経験を活かし、LNG燃料を安全かつ定期的に供給できる仕組みを構築しました。国内で初めてスキッドと呼ばれる導管装置を用いてタンクローリー4台と本船を接続し、短時間でLNG燃料供給を行っています。また、本船は高効率プロペラなどの省エネ推進システムや省エネ船型、航海支援システムを採用し、エネルギー消費量及びCO2排出量を低減しています。2025年に就航予定の新造船についても、LNG燃料に加え、様々な最新技術を採用することにより、CO2の排出量を従来船に比べ約35%抑えることが可能になる見込みです。そのほかにも当社グループのフェリー・内航RORO船事業では航路の適性に合わせた環境負荷低減技術を活用し、GHG排出削減に取り組んでいます。
3.自社のサプライチェーン、ひいては社会全体のCN達成に対する取組について教えてください
原材料や燃料の輸送を担う当社グループの事業特性に鑑み、事業活動におけるGHG排出量削減を実現することで、当社グループのサービスを利用する顧客、ひいては社会全体のサプライチェーンにおけるGHG削減に貢献できると考えています。
前述の通り、船舶燃料の転換や燃料消費量の削減に取り組みつつ、「モーダルシフト」の進展を促す努力を継続します。
モーダルシフトとはトラックなどの自動車による貨物輸送から環境負荷の小さい船舶等の利用へと輸送手段を転換することで、CO2排出削減という環境負荷低減のみならず、トラックドライバー不足の解決策としても注目されています。当社グループではモーダルシフトを推進するために、安心して船舶を利用して頂けるよう安全運航に努めると共に、燃料消費量削減との両立を図りながら本船を大型化するなど、適切なスペース提供を目指し、社会からの船舶輸送需要に応えます。
4.GXリーグでの活動について教えてください
フェリー・内航RORO船事業の属する内航海運業界では、大半を占める小規模事業者に環境投資を行う資金的な余力が乏しいことなどから、燃料転換など一定以上の投資が必要な施策の採用は進んでいません。一方で、船舶による海上輸送は他の貨物輸送に比べて環境負荷が小さく、海上輸送そのものが社会のGHG削減に貢献しているといえます。
今般のGXリーグ参加を契機に、内航海運による社会の環境負荷低減への貢献をより広く知って頂くとともに、当社グループの取り組み紹介を通じて、内航業界全体の更なるGHG削減推進を後押しできればと考えています。