川崎重工業株式会社
1.策定されている環境関連・削減目標について教えてください
Scope 1, 2については、水素発電を軸とした自主的な取り組みにより、2030年国内において、カーボンニュートラル実現を目指します。Scope 3については、「水素化」「電動化」「グリーン電力網」「代替燃料」「CCUS※」をキーワードに製品・サービスの脱炭素化を進め、2040年には、「Zero-Carbon Ready」、すなわち当社の脱炭素ソリューションをお客様に選択していただける状態にすることを目指します。
川崎重工グループは水素サプライチェーンの構築、水素燃料の普及等、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めており、これはGXリーグが目指すべき方向性と一致します。GXリーグを通じて、気候変動問題の解決に向けた取り組みを加速させていきます。
※ CCUS: Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(排出されるCO2の回収+地中深くへの圧入+CO2の利用)
2.自社の環境関連・削減目標の達成に向けた取組について
教えてください
川崎重工グループのScope 1, 2のCO2排出量は年間約40万トンで、そのうち国内が約30万トンを占めています。
2030年にこの国内での年間CO2排出量約30万トンを0に削減する、国内カーボンニュートラル実現に向けて、CO2排出量の削減を進めます。省エネや太陽光などの再生可能エネルギーの導入により5%の削減、廃棄物発電により10%の削減、CCUS等により20%の削減、自社製の水素発電設備の導入により65%の削減を計画しています。水素発電については、2030年頃の液化水素による国際的な商用サプライチェーンの構築を目指しています。この水素を用いて自社製の水素発電設備を導入し、廃棄物発電、再生可能エネルギーなどを組み合わせることで自社においてゼロエミッション工場を実現します。CO2排出量は、省エネ・再生可能エネルギー、廃棄物発電などの導入により緩やかに減少し、2030年頃には水素発電設備の稼働により大きく減少し、ゼロとすることを計画しています。また、現在、海外工場においても各国のCO2排出規制などの動向を踏まえ、具体的な削減策を検討しています。
近年では、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による液化水素の国際的な運搬の実証完了(2022年)や水素専焼ガスタービンの販売開始(2023年)等、水素社会実現に向けた取り組みを着実に進めています。当社グループでは、水素の「つくる・はこぶ・ためる・つかう」全局面での機器・サービスの開発促進により、自社のScope1,2のCO2排出量削減はもちろんのこと、水素の社会実装に幅広く貢献していきます。
3.自社のサプライチェーン、ひいては社会全体のCN達成に対する取組について教えてください
Scope 3のNet Zeroは、お取引先やお客様などバリューチェーンに関わる皆様がすべてZero-Carbon Readyになることで、初めて達成できます。当社はScope 3について実施可能な対策を最大限行い、2040年にZero-Carbon Readyを実現します。具体的には、カテゴリー①は材料や部品の調達先におけるCO2排出を80%削減、カテゴリー⑪においては全事業においてCO2FREEなソリューションを標準ラインアップします。さらに、水素社会の実現とCCUS事業などを通じて、当社Scope3の排出量を上回るCO2削減を進め、世の中のカーボンニュートラルの早期実現に貢献していきます。
カテゴリー①の削減については、当社では材料や部品の調達先であるお取引先と排出情報の共有などの連携を深めるとともに、水素発電による電力や水素燃料、その他の代替燃料、さらにCCUSなどのソリューションを自社グループで活用するのみならず、お取引先へも提供することなどを通じて、CO2削減をサポート、排出ゼロをより早期に実現していきます。
その第一歩として、2023年度は、一部の事業で調達品に関わるCO2排出量の見える化ツールを導入するとともに、お取引先向けカーボンニュートラル説明会・勉強会を実施しました。今後はこうした動きを全社展開し、排出量削減に向け、お取引先とさらなる協力体制を築いていきます。カテゴリー⑪の削減については、すべてのお客様にCO2 FREEなソリューションを提供できるよう、「水素化」「電動化」「グリーン電力網」「代替燃料」「CCUS」をキーワードに製品・サービスの脱炭素化に取り組んでいきます。
4.GXリーグでの活動について教えてください
適格カーボン・クレジットWGへの参画を中心に活動を実施しています。
カーボンニュートラルを実現するには、脱化石燃料に加え、CCUS/DACCS※によるネガティブエミッション技術が不可欠です。しかし、現在はCCUS/DACCSのようなネガティブエミッション技術に経済合理性を与える手段がありません。
GXLでは、これらネガティブエミッション技術を早期に社会実装するためのカーボンクレジット方法論の提言を行っています。国内に限定せず、海外活動も広くクレジットとして活用できるような互換性・流動性を高めるための条件整備をはかり、将来は国のNDC(国が決定する貢献)にも資するようなカーボンニュートラル政策提言に貢献していきます。
※DACCS:Direct Air Carbon Capture and Storage(大気から直接炭素を回収・貯留する)