J.フロントリテイリング株式会社
1.策定されている環境関連・削減目標について教えてください
当社は、気候変動への対応をサステナビリティ経営上の重要課題と位置づけています。気候変動に伴うリスクや機会は、当社グループの事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、2050年までのバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量ネットゼロ※1 を目指し、温室効果ガス排出量削減とサーキュラー・エコノミーの推進の両輪でその対策に取り組んでいます。
当社グループは、世界全体の1.5℃目標達成のため、2018年に長期的な温室効果ガス排出量削減目標を設定し、2019年にScope1・2・3排出量削減目標についてSBTイニシアチブによる認定を取得しました。2021年には、2030年のScope1・2排出量削減目標を従来の40%から60%削減(基準年2017年度比)に引き上げ、「1.5℃目標」としてSBT認定を再取得しました。そして、2023年2月には、Scope1・2・3排出量について、2050年までの「ネットゼロ目標」の認定を取得しました。
これらの長期目標達成のため、当社グループは、2019年度から、自社施設における再生可能エネルギー由来電力の調達を開始し、2020年10月に「RE100」に加盟し、2050年までに、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率100%を目指します。また、その中間目標として、2030年までに、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率60%を目指します。
今後も、2050年までのネットゼロの実現に向け、再生可能エネルギー由来電力の調達拡大に取り組みます。
<JFRグループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標>
❍温室効果ガス排出量
2050年 Scope1・2・3温室効果ガス排出量ネットゼロ※2
2030年 Scope1・2温室効果ガス排出量60%削減(2017年度比)※2
2030年 Scope3温室効果ガス排出量40%削減を目指す(2017年度比)※2
❍事業活動で使用する電力に占める再エネ比率
2050年 事業活動で使用する電力に占める再エネ比率100%※3
2030年 事業活動で使用する電力に占める再エネ比率60%
※1 温室効果ガス排出量を徹底して削減し、残りの排出量について、森林吸収やCCS(CO2の回収・貯留)等による除去量を差し引いて実質ゼロにすること
※2 SBT認定取得
※3 2020年 RE100に加盟
2.自社の環境関連・削減目標の達成に向けた取組について
教えてください
当社グループは、2050年ネットゼロの実現に向け、中長期視点から戦略を強化していく必要があると考えています。そのため、2050年ネットゼロ実現に向けた移行計画を策定しました。同計画では、事業戦略において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指すため、短期・中期・長期的視点から、具体的取り組みを明確化しています。
百貨店やショッピングセンターなどリテール事業を主軸とする当社グループにおいて、Scope1・2排出量の90%以上が店舗からの排出であり、そのうちおよそ80%が電力使用に伴う排出です。よって、店舗で使用する電力について、省エネ化およびエネルギー効率の向上を図るとともに、再エネへの切り替えが必要であると認識しています。2019年に100%再エネで運営する店舗としてオープンした大丸心斎橋店を皮切りに、関西・関東・中部地区へと順次再エネに切り替えました。再エネ電力で運営する店舗は建物の環境価値を向上させ、環境課題に意識の高いお取引先様やお客様の支持獲得につながると考えており、今後も、再エネ電力への切り替えに積極的に取り組んでいきます。
3.自社のサプライチェーン、ひいては社会全体のCN達成に対する取組について教えてください
当社のScope3排出量は、その90%以上をカテゴリ1(調達した商品・サービス)が占めているため、自社努力による削減が極めて難しく、バリューチェーン全体で協働して削減に取り組むことが必要です。
当社は、今後、サプライヤーの削減努力を反映していけるよう、サプライヤー企業の排出量の一次データを取得し、算定を進めていきます。大丸松坂屋百貨店では、お取引先様に対して、排出量の算定や削減目標の設定、また排出量に係る一次データを提供していただくお願いなど、お取引先様の状況に応じた対話を進めています。
また、大丸松坂屋百貨店は、2021年3月にファッションサブスクリプション事業「AnotherADdress(アナザーアドレス)」をスタート。ファッションの本質的な価値や、サステナブルな取り組みを重視し、社会や環境にとって持続性の高いビジネスモデルへ転換することを目指し取り組みを進めています。2023年12月には、レンタルが難しくなった衣料品をアップサイクルするブランド『reADdress』(リアドレス)を新たに展開しています。さらに、2024年8月には、衣料循環プロジェクト『roop』が環境省のデコ活推進事業に採択されました。サービス利用者や百貨店事業との連携による「衣類回収」の仕組みを新たに加えることで、生活者参加型の「第4の循環:roop」を実現。思い入れのある大切な服が循環し続け、未来に繋がる社会を目指します。
4.GXリーグでの活動について教えてください
J.フロントリテイリンググループは2050年のネットゼロ実現に向け、バリューチェーン全体での取り組みを加速するため、GXリーグの理念に賛同し、GXリーグに参画しました。GXリーグに参画することで、様々な企業様との意見交換やネットワーキング、ルールメイキングの議論、ビジネス機会創出の場として、学びを深めています。
バリューチェーン全体のネットゼロに向けては、今後の社会実装が期待される技術(メタネーション、アンモニア燃焼、CCUSなど)についての知見を取り込み、それを見据えた中長期のロードマップを検討していくことも必要だと認識しており、その共有の場として活用しています。
今後も社会の一員の使命として、より良い地球環境を次世代へつないでいけるよう、お客様やお取引先様とともに「脱炭素社会の実現」に貢献してまいります。