ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社

1.検証機関の強み・実績

 ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン㈱は、東京都環境確保条例に基づく排出量取引制度や埼玉県目標設定型排出量取引制度において条例制定当初から登録第三者検証機関として活動しており、国内クレジット制度(2008年~2012年)においても登録審査機関(前身のCIジャパン㈱)として排出削減計画の審査や実績報告の検証を通じて多くの実績を積み重ねてきました。2018年以降は、企業による自主的なCO2排出量をはじめとするESG情報開示の第三者保証業務を推進しております。特に2020年1月には公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)より温室効果ガス(GHG)に関する妥当性確認及び検証を行う機関に対する要求事項であるISO14065認定を取得し、適切なGHGマネジメントシステムを維持することで第三者保証業務を提供できる審査機関として認められております。GHGマネジメントシステムでは、規格の要求事項を遵守、支援及び実証することを可能とするものであり、公平性の確保や力量管理、検証の実施が適切に運用されるものです。
 検証プロセスにおいてはISO14064-3(2019)に基づき専門性を含めた力量維持管理されたGHG検証人が適確に検証を遂行し、信頼性が担保された独立した第三者機関としての意見を適切に表明することが可能です。ISO14065認定により環境省のSHIFT事業やJ-クレジット制度の登録審査機関として現在に至るまで多くの検証実績を積み上げているところですが、一方で、昨今の企業による自主的なGHG排出量情報開示の動きが加速度的に広まる中、開示情報に対する信頼性に対する要求も高まっており、公平・公正な独立した第三者機関として社会的責任を果たすべきであると考えております。ソコテックは排出削減量の認証を行う「J-クレジット制度」における妥当性確認、検証においてトップシェアでサービスを提供しており、再生可能エネルギーや農林水産事業、森林吸収量、省エネ・燃料転換、廃棄物に至るすべての分野で審査可能な唯一の機関として登録されています。近年ではGHG排出量情報のみならずエネルギー使用、水使用量、廃棄物排出量、大気汚染物質排出量等の環境パフォーマンスデータや社会データといった非財務情報の開示に対する第三者保証ニーズも増えており、これに応える形でISO14065認定機関としての強みを生かして年間200件以上(環境省 SHIFT、J-クレジット制度はすべて合理的保証水準)の検証実績を誇っております。

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2.排出量についての検証の展望

 CDP情報開示プラットフォームは企業の環境への取り組み状況や課題解決に向けた意欲、ビジネスに影響を及ぼす可能性のあるリスクの度合いなどを評価し、スコア化するものであり、企業等の環境行動に関する世界最大級のデータプラットフォームとして環境情報開示のグローバルスタンダードとなっています。そのような中、ハイレベルなスコアを獲得するためには、検証済みのGHG排出量(スコープ1,2,3)情報を開示することが必須となっています。これは開示情報の信頼性向上のための手段として第三者検証の重要性がニーズとして高まっている一つの例であり、投資における判断基準の重要な指標の 1 つになっているESGレーティングにおいても同様であると言えます。
 一方で、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)などを含む非財務情報開示を行う際の統一された国際基準(ISSB基準(IFRS S1,S2))が策定されたことを受け、企業会計基準委員会の下部組織であるサステナビリティ基準委員会(SSBJ)はISSB基準を参照したサステナビリティ関連財務情報の開示に関する国内基準を開発する審議を行っており、目標となっている2025年3月末までに日本版S1S2の基準が確定公表されることにより、3月決算企業を想定した場合、2026年3月期(FY2025)に係る有価証券報告書から、SSBJ公表の基準に基づくサステナビリティ開示が可能になると想定されます。ISSBでは包括的なサステナビリティ情報のグローバルベースラインを作成する事が目的の為、指標に対する比較可能性・信頼性を担保する事が必要である故、国際的に統一された検証基準に基づくGHG排出量を含めたサステナビリティ開示情報の検証がISSA5000としてグローバルスタンダード化していくものと考えております。この他、EUで事業展開する日本企業においては、EUにおけるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)に基づき今後サステナビリティ情報の開示が求められており、保証水準も限定的保証から合理的保証へ移行していくことが予想されます。ソコテックは金融庁によるISSA5000公開草案に関連するIAASBラウンドテーブルに出席し、新たな保証基準に関する議論に参加いたしました。
 以上のように国際的にも「標準化」という志向の下で情報開示の動きが今後益々広がると考えられ、開示情報の信頼性という観点から検証機関に求められる役割・責任は重要であり、今後のニーズに対応すべく確固たる検証組織体制を備えていきたいと考えております。

3.合理的保証を受けるために準備すべき事項

 合理的保証においては検証した結果として「算定データは算定基準に準拠され、全ての重要な点において適正に表⽰しているものと認める」といった積極的意見を表明することが求められるため、特に組織バウンダリーにおいて多数の拠点を有し、取り扱う排出量算定に係るデータが多い企業においては、有効的且つ効率的に検証を実施するためにも企業が内部統制に依拠することができる体制が機能しているか否かについて判断する必要性が増しています。
 内部統制としては全社レベルと拠点レベルでの統制環境の整備と遂行が求められます。全社レベルでは各拠点の算定データを集約して組織としての算定結果として確定させるための統制手続きであり、企業全体に影響を及ぼすこととなります。拠点レベルでは、拠点ごとの業務プロセスに組み込んだ形で算定データをどのように集計して報告するのかといった統制手続きであり、全社レベルでの内部統制の遂行と連動するものになります。
 内部統制に依拠できるかについては、信頼性の確保という観点で、企業がデータを正確に把握し、データの品質を確保する仕組みが構築され、企業の内部統制体制に基づくQA(品質保証)/QC(品質管理)が機能しているかがポイントとなります。QA/QCとしては、以下の通り教育・訓練、記録の保管、データチェック、内部監査の実施が挙げられます。

 教育・訓練:排出算定に係る要員に対して算定手順に基づくモニタリング及び排出量算定・報告に関する教育・訓練を実施することが必要です。
 記録の保管:排出量を算定するために使用した全てのデータを文書化し、保存する必要があります。第三者検証のためだけでなく品質管理上の内部チェックにおいても重要です。
 データチェック:データのチェックは、算定責任者、算定担当者及び入力担当者等、役割責任を明確化した上で、入力ミスのリスク低減のために購買データや実測データ等の算定データ入力時の入力担当者自身による自己チェックのみならず、データを集計する際の算定担当者等によるチェックなど、複数人による相互チェックを行う仕組みが重要です。また、全社レベルでは算定情報のデータチェックとして他の関連データとの比較、経年的なデータ変化や拠点間の比較、恣意的データ・外れ値の識別等を実施することが望まれます。
 内部監査:QA/QCが適切に機能しているかについて内部監査を実施し、一連の集計・算定プロセスで発見された課題や問題点について、是正措置・予防措置等の必要な措置が取られることが望まれます。