一般社団法人 日本能率協会
地球温暖化対策センター

1.検証機関の強み・実績

 日本能率協会 地球温暖化対策センターは、2006年に設立され、2009年より京都議定書に基づくクリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism)における指定運営組織(DOE:Designated Operational Entity)として活動してきた検証機関です(2009年から2017年までDOEとして活動)。その後、排出量取引や自主報告の機運が高まる情勢の下、今日に至るまで、国内のクレジット、排出量取引制度に関する検証や、二国間クレジット制度など、海外にも関係するスキームの検証も実施してまいりました。また、2011年にはISO14065の認定を取得し、組織、プロジェクト単位の両方で国際的な基準に基づく認定を持つ検証機関として活動しております。さらに、2022年には国内初のCDPの検証パートナーとなり、各企業やバリューチェーン全体の数値の透明性と正確性の向上に寄与して参りました。昨今では、水や廃棄物等の環境情報、そして人的資本の社会情報に関する検証も行っており、多くの企業からの依頼に基づき幅広い分野での保証業務を展開しております。企業が公表する数字に対する第三者性が高まる中、投資家を含めた社会が求める信頼に応えられる検証機関であり続けることを目指して参ります。

2.排出量についての検証の展望

 企業に対しては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB:International Sustainability Standards Board)などに代表される国際的な非財務情報の開示基準や、金融庁が上場企業に求めるサステナビリティ情報の有価証券報告書への記載など、サステナビリティ全般の情報開示が求められています。検証機関としても国内外の最新動向に注視しつつ、GHG排出量他に関しては、何を、どの範囲で、何の基準に基づいて検証を行ったか、一般消費者や検証先の取引先様等のステークホルダーから誤解を受けない表現が求められます。また、CDPなどの情報開示を求める国際NGO、大手企業が求める取引先に対する組織レベル、製品レベルの排出量検証など、自社の経営・統制する範囲のみならず、バリューチェーン、ライフサイクルといった概念での幅広い検証も求められてくると考えております。そのような中、組織レベルの排出量を報告・検証するにあたっては、その正確性・透明性が重視され、検証機関に対しても、企業の報告を端に確認するのみならず、その企業が出そうとしている情報が利害関係者や世の中から求めているものであるかを認識した上での検証が今後期待されるようになると考えております。

3.合理的保証を受けるために準備すべき事項

 今後サステナビリティ情報への開示には、企業としての戦略、そして戦略に紐づいたKPIの設定とその運用が求められます。これまで以上に数字の持つ意味が広がることから、活動量の集計方法の見直しや、チェック体制の構築、経営企画やIRとの連携が急務です。そしてウォッシュと言われないための開示も必要なことから、広報も含めた横断的な取り組みが求められてきます。この報告・算定の取り組みと開示に向けた横断的な取り組みの連携をトップダウン形式で構築することが必要と考えます。
検証においては、組織が算定する排出量データを適切性、安全性、一貫性、正確性、透明性の観点から確認いたします。記載上の情報や数値が合っているかの確認のみではなく、その対象とする範囲、集計過程、算定体制の確認などを通じて、客観的な立場から、算定が適切か、問題が潜んでいないかの確認を行います。このような外部からの確認に対応できる、主観的・属人的でない算定プロセスの構築が必要になります。さらに、合理的保証においてはデータの網羅性、正確さを限定的保証よりも重視して確認することになります。
 GXリーグでは、将来的な排出量取引も見据えた排出量検証を行うこととなりますので、1トン単位のCO2排出量をより適切に算定、報告するよう努め、検証を受けて確実なものにする、という考えの下で検証を受けていただきたいと思います。