日本郵政株式会社
1.策定されている環境関連・削減目標について教えてください
日本郵政グループは2024年5月に発表した「JP ビジョン2025+」における主要目標のひとつとして「2050年カーボンニュートラルの実現を目指す」という超長期の目標と、これを着実に推進するためのマイルストーンとして温室効果ガス排出量の「2030年度46%削減(対2019年度比)」を掲げ、カーボンニュートラルの実現に向けた取組を推進しています。
2.自社の環境関連・削減目標の達成に向けた取組について
教えてください
自社と地域の温室効果ガス排出量の削減を目指して
グループの温室効果ガス排出量のうち日本郵便と郵便・物流関係の子会社が9割超を占めているため、郵便・荷物の輸送・集配車両からの排出量と郵便局等の建物で使用する電力からの排出量の削減に重点を置いて取り組んでいます。
一方で、目標達成のためには、我が国における再生可能エネルギーの普及などカーボンニュートラル化が相当程度進むことが必要です。
このため、日本郵政グループは、地域や社会全体としての排出量削減においても、郵便局が地域のハブとしての役割を発揮するとともに、サプライチェーン全体での削減を進めるよう取り組んでいます。
具体的には、グループの排出量の多くを占める日本郵便では、下表のとおり、「電化・脱化石燃料」、「省エネ」、「創エネ」、「商品・サービスの開発・リニューアル」の観点から、温室効果ガス排出量の削減を進めています。
Scope1, 2における温室効果ガス排出量削減に向けては、EV車両の積極的な導入に加え、一例として、以下の取り組みを行っています。
基幹輸送のカーボンニュートラル化に向けて
二輪車両や小型四輪車両のEV化が進む中、幹線輸送を担う、中大型車両の脱炭素の技術イノベーションが期待されています。日本郵便とその子会社である日本郵便輸送は、「グリーンイノベーション基金事業」の実証実験等により、基幹輸送を担う中大型車両の脱炭素化に取り組んでいます。
○リニューアブル・ディーゼル燃料車両の導入
2023年5月より、リニューアブル・ディーゼル燃料※の利用可能性を確認するための実証実験を行っています。神奈川西郵便局(神奈川県)と当該郵便局が受け持つ各郵便局との相互間で運行を行い、実運用での問題がないかなどを確認しています。
※廃植物油などを原料としたバイオディーゼル燃料の1つで、「地球温暖化対策の推進に関する法律」上、CO2排出量はゼロ(カーボンニュートラル)となります。
○水素燃料電池トラック(FCV)による輸送
2023年11月よりFCVによる郵便物等の運送を開始しています。小型のFCV(3t車)5台が導入され、現在、東京都内の郵便局間で運行されています。
2025年度以降には、大型のFCV(10t車)4台の導入を予定しています。
※水素燃料電池トラックの取り組みは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発助成事業「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」として実施しています。
電力需給の波動性への対応による再生可能エネルギーの有効活用
○蓄電池の活用による再エネ利用効率の向上と電力需給安定への貢献
太陽光発電等の再生可能エネルギーは、時間帯や季節・天候によって供給量が変動します。同様に需要にも変動性があるため、需要と供給がマッチせず、供給過剰や不足が発生することがあります。
これは、再生可能エネルギーを導入している郵便局だけではなく、社会全体としても課題となっています。
日本郵便では、蓄電池を活用することにより、日中に発電された太陽光エネルギーを蓄電池に蓄え、夜間の需要ピーク時に放電する等、再生可能エネルギーの利用効率の向上と、地域・社会全体としての電力需給の安定に貢献することを目指しています。
例えば、中部電力グループとの戦略的提携に基づき、天白郵便局(愛知県)に太陽光発電設備と蓄電池を設置し、再生可能エネルギー活用とエネルギー利用最適化の取り組みを進めています。
また、パワーエックス社とのカーボンニュートラル社会の促進に向けた協業に関する合意に基づき、岡山郵便局(岡山県)において、大型蓄電池を活用した電力最適化サービスの導入を進めています。
地域らしさを活かした環境にやさしい郵便局とZEB認証郵便局
○地域らしさを活かした環境にやさしい「+エコ郵便局」
日本郵便では、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーや、CLT※の活用などにより環境に配慮した「+エコ郵便局」を設置し、当社の温室効果ガス排出量削減だけでなく、地域のカーボンニュートラル化の推進にも取り組んでいます。
2024年3月までに、全国で14局の「+エコ郵便局」を開局しました。
2024年1月に開局したイオンタウン鷹巣郵便局(秋田県北秋田市)では、CLTのほか、再生可能エネルギーとして、郵便局としては初めて地中熱を活用した空調を導入しています。
※CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー):長い板状の木材を縦横交互に張り合わせた厚型のパネルで、強度や断熱性に優れており、コンクリートや鉄に比べてCO2の発生を抑制
○郵便局初のZEB認証
那覇東郵便局(2024年10月開局予定)は、2023年6月、郵便局として初となるZEB認証※(Nearly ZEB)を受けました。
建物の省エネ性を高めるとともに、太陽光発電設備及び蓄電池設備を導入し、エネルギー自立が可能な郵便局となります。
また、レジリエンス強化型ZEBとして、災害時には地域住民の一時避難場所としての役割も担うことが期待されています。
※ZEB認証制度について:ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことで、これを公的機関が認証するものです。Nearly ZEBとは、「ZEB」に限りなく近い建物として、従来の建物と比較して50%以上の省エネルギーを達成しつつ、再生可能エネルギーによる創エネによって年間の一次エネルギー消費量を25%以下とした建物のことです。
3.自社のサプライチェーン、ひいては社会全体のCN達成に対する取組について教えてください
日本郵政グループは、気候変動への対応において、サプライチェーン全体で取り組みを進め、低環境負荷社会の実現を目指しています。
郵便局を活用した地域のカーボンニュートラル化の推進
○EV車両の性能向上に向けた実証実験と地域での再生可能エネルギーの活用
日本郵便では、東京電力ホールディングスとの戦略的提携に基づき、小山郵便局(栃木県)及び沼津郵便局(静岡県)において2021年から、EV車両の航続距離延伸を図る実証実験を行っています。
この実証実験には三菱自動車工業も参画し、集配用のEV車両だけではなく、商用EV全体の走行性能向上にも取り組んでおり、日本社会全体のEV普及に貢献しています。
また、急速充電器の利用をお客さまや地域の方々に開放し、再生可能エネルギーの普及や、地域のEV化の推進に貢献しています。
このような取り組みにより、地域のカーボンニュートラル化の推進に貢献していきます。
サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に向けて
2024年4月、日本郵便とその主要な連結子会社は、自らの事業活動にかかわるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量削減を目指すため、パリ協定に基づく温室効果ガスの排出量削減目標「Science Based Targets」※の認定取得を目指し、コミットメントレターを提出しました。
今回の意向表明を機会として、2050年のカーボンニュートラル化の達成に向けて、2030年度までに温室効果ガスの2019年度比46%削減を目指し、サプライチェーンで排出される温室効果ガス(Scope3)を含むトータルでの温室効果ガス排出量の削減に一層取り組みます。
※パリ協定が求める水準と整合した企業の温室効果ガス排出量削減目標。Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)によって認定される。また、SBTiは、WWF、CDP、世界資源研究所 (WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブ。
4.GXリーグでの活動について教えてください
当社は、2022年より「GXリーグ基本構想賛同企業」として「GXリーグ」の実装に向けた詳細設計の議論と取り組みの実証に参加し、2023年4月に、GXリーグに参画いたしました。
当社は、GXリーグへの参画を通して、日本郵便と共にカーボンニュートラルに向け、温室効果ガス排出削減に貢献してまいります。