岩谷産業株式会社
1.策定されている環境関連・削減目標について教えてください
当社グループは、2050年までにカーボンニュートラルを⽬指すことを表明し、そのマイルストーンとして、国内で当社グループが排出するCO2について2030年度に、2019年度⽐で50%削減することを⽬指しています。
当社は1941年に水素の取り扱いを開始し、製造から輸送・貯蔵・供給・保安まで一貫した全国ネットワークを築いてきました。当社がパイオニアとして市場を一から開拓してきた水素は、今や産業用途のみならず、脱炭素社会の究極の担い手としてエネルギー利用の道が拓かれ、社会実証に向かって大きく動き出しています。水素エネルギー社会の実現に向けて、国内外のパートナーとの連携により、水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」という観点からCO2フリー水素サプライチェーン全体にわたる取り組みを進めています。
2.自社の環境関連・削減目標の達成に向けた取組について
教えてください
2030年度の削減目標に向けて、事務所、研究所、ガスセンターなどへの太陽光パネルの設置やLED 照明の導入を進めているほか、産業ガスプラントでのLNGの冷熱利用や各拠点への再生可能エネルギー由来の電力導入、LP ガスの物流・配送の合理化を進めています。
また、2024年4月には、設備投資などにより削減されるCO2を金銭価値として見える化し、社内の脱炭素投資を促進する「社内炭素価格制度」を導入しました。更なる脱炭素投資を進めるとともに、J-クレジット制度の活用、非化石証書の活用も検討し、目標達成を目指します。
3.自社のサプライチェーン、ひいては社会全体のCN達成に対する取組について教えてください
「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」を企業理念とする当社は、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むDNAを持っており、脱炭素社会の実現は我々の使命であると考えています。これまで培ってきた事業基盤や技術力を生かし、産業からくらしにいたるまで、低・脱炭素ソリューションをお客さまに提供することにより、社会全体のCO2排出量削減に貢献していきます。
[低・脱炭素ソリューションの具体的な取組み]
- 燃料転換
重油、灯油からLPガス・LNGへ燃料を転換することでCO2排出量を15%~30%程度削減 - バイオマス燃料の提供
バイオマス発電所の燃料として使用される「PKS(パームヤシ殻)」や「木質ペレット」を東南アジアから輸入 - J-クレジット×CO2排出量算定・可視化サービス
お客さまが削減したCO2排出量を当社が取りまとめ、J-クレジットとして環境価値化
国際基準GHGプロトコルに則り、CO2排出量の可視化サービスを提供 - 環境対応型溶断用混合ガス「ハイドロカット®」
当社が開発・製造する溶断・ろう付け用途の水素とエチレンの混合ガス
CO2排出量をアセチレンから84%、プロパンガスから65%削減が可能 - 低環境負荷PET樹脂の提供
植物由来原料を使用したPET樹脂や優れたリサイクル性を持つアルミ触媒PET、生分解性樹脂など、低環境負荷樹脂を幅広く取り扱っている
また、当社は、2050年のカーボンニュートラルに向けて、当社の事業活動におけるCO2排出量の削減を進めるとともに水素事業の拡大により、社会全体のCO2削減に貢献していきます。
[具体的な取り組み例]
- 水素・LPガス混合導管供給
当社は、相馬ガス㈱などと共同で、水素LPガス導管供給の実証事業(NEDO助成事業)を行います。
相馬ガス㈱が供給しているLPガス事業エリアで、水素を混合させて導管供給します。一般住宅を対象とした民生向け水素混合LPガスを導管で供給し、燃焼用ガスとして使用すること、また、既存の供給インフラ、ガス機器等を使用するという点で国内初の取り組みとなります。この事業での供給実績や得られた知見を通し、水素混合LPガス事業の他の国内エリアへの拡大に向けた検討を行います。
- グリーンLPガス
水素とCO2を合成させたLPガスを製造する新たな技術(プロパネーション・ブタネーション)の確立と早期実証化を推進しています。また、LPガスと類似した特性を有するDME(ジメチルエーテル)からLPガスを製造する技術の研究も進めています。
- 水素ステーションの整備
燃料電池自動車(FCV)や燃料電池バス(FCバス)が普及するためには、水素供給インフラの整備が不可欠です。現在、国の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の計画に従い、全国で水素ステーションの建設が進められており、これまでに全国で161カ所がオープンしています。(2023年12月現在)
当社では、2014年に兵庫県尼崎市で国内初の商用水素ステーションを開所したのを皮切りに、現在では、国内53カ所、米国5カ所で運営を行っています。 - 水素燃料電池船
2025年に開催される大阪・関西万博に協賛し、中之島ゲートから大阪・関西万博の会場となる夢洲をつなぐ航路で、国内初となる水素燃料電池船の旅客運航を行うこととなりました。今回の水素燃料電池船は、航行時にCO2や環境負荷物質を排出しない高い環境性能を有するだけでなく、におい、騒音、振動のない優れた快適性を実現します。本船は海上の「動くパビリオン」と位置付けられており、大阪・関西万博会場までの移動を特別な体験に変え、水素エネルギーの魅力を世界に発信することを目指します。
4.GXリーグでの活動について教えてください
当社は2023年4月に、「GXリーグ」に参画しました(GXリーグの本格運用に向け基本的な指針を示した「GXリーグ基本構想」には22年3月に賛同)。
当社は、自社グループの2050年カーボンニュートラル化を目指すとともに、水素エネルギー社会の実現に向けた取り組みなど、社会全体のカーボンニュートラルに資する取り組みを積極的に進めており、GXリーグの枠組みを活用し、こうした取り組みを一段と推進していきます。具体的には、2025年度及び2030年度のGHG排出削減目標を設定し、削減を進めるとともに、GX関連のルール形成ワーキングなどへ積極的に参画しています。
これらの取り組みを通して、GXリーグの基本構想にある「GXへの挑戦を行う企業が、排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できる社会(経済と環境および社会の好循環)」が実現していくことを期待しています。