COP28において経営促進WGが削減貢献量に関する成果物を公表。削減貢献量の普及に向けて前進しました

2023.12.20

2023年12月3日 13:00〜14:15(GST) COP28 Japan Pavilion


2023年12月3日(現地時間)、COP28会場内ジャパン・パビリオンにおいて、経済産業省・WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための経済人会議)共催によるイベント「ネットゼロ社会に向けた削減貢献量の適切な評価」が開催され、GXリーグからGX経営促進ワーキング・グループが「削減貢献量 -金融機関における活用事例集-」を紹介しました。

2023年4月のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合において「削減貢献量(Avoided Emissions)」を認識することの価値や今後の具体化に向けた課題についてグローバルな共通理解を得られたことを受け、本イベントでは、削減貢献量をより実態に即した仕組みにしていくための活動や、産業や金融の視点から取組状況・意見を共有し、今後に向けた議論を行いました。

連日多くのイベントが行われるCOPにおいて、本イベントには多くの聴衆が集まり、会場は満員に。削減貢献量に対する関心の高さがうかがえました。

GX経営促進ワーキング・グループにおける活動成果を発表

野村ホールディングス(GX経営促進ワーキング・グループ幹事企業)

GXリーグのGX経営促進ワーキング・グループを代表して、幹事企業である野村ホールディングスより、サステナビリティ企画部 ヴァイス・プレジデントの濟木ゆかり氏が登壇。GX経営促進ワーキング・グループの取組とその成果を発表しました。

濟木氏は最初に、GXリーグの概要を説明した上で、主な取組のひとつであるGX経営促進ワーキング・グループの活動を紹介。2022年9月に設立されたGX経営促進ワーキング・グループは、同社を幹事とするリーダー企業6社と86社のメンバー企業(2023年12月時点)からなる活動体で、世界全体のカーボンニュートラル実現に向け、気候関連のリスクに着目した既存の枠組みによる評価だけでなく、企業が持つ気候変動への貢献面=「機会」(市場に提供する製品・サービスによる排出削減等を通じて企業価値に資する取組)が適切に評価される仕組みの構築を通じて、社会全体の脱炭素化を推し進めることを目的としています。

濟木氏は、2023年3月末に、削減貢献量をはじめとする気候関連の機会の開示・評価についての考え方をまとめた「気候関連の機会における開示・評価の基本指針」を公表したことを紹介。その上で、今回新たに取りまとめた「削減貢献量 -金融機関における活用事例集-」から、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、Mirova(サステナビリティに特化した仏投資運用会社)、野村アセットマネジメントによる削減貢献量の活用事例、および各社へのインタビュー内容を紹介しました。その上で、削減貢献量の重要性は既にG7等の場で国際的に認知されているところ、実際に企業評価や投資分析、投融資を通じたインパクトの可視化等において削減貢献量が金融機関によって活用されており、さらなる普及を通じて社会全体の脱炭素化を推し進めていくことが重要である旨紹介しました。

金融機関による活用事例紹介の一部(事例集より)

また、本事例集の作成にあたって密に議論したWBCSDを代表して、本事例集への歓迎コメントを寄せたDominic Waughray氏に感謝の言葉を伝えました。

そのほかにも、当日の様子をご紹介します。

削減貢献量の普及・活用促進のために

開会のスピーチには、経済産業省の小林出 大臣官房審議官(環境問題担当)が登壇。「カーボンニュートラルにつながる先進的な企業や技術を適正に評価していくためには、削減貢献量の概念が重要」と述べ、今後の普及活用に向けた重要課題として「国際基準を作ること、金融機関による活用促進、グリーンウォッシュ回避」などを挙げました。

WBCSD Dominic Waughray氏による講演

続いて、共同主催者であるWBCSDのExecutive Vice Presidentを務めるDominic Waughray氏による講演が行われました。

冒頭、Waughray氏は、前年のCOP27で削減貢献量について取り上げて以来、G7札幌での位置付けなど、この1年間で大きな進展があったことに言及。日本の政府やステークホルダーの貢献に対し感謝の意を述べました。GHGプロトコルの設立以降、多くの企業がGHGプロトコルによるScope 1、2、3の排出量算定・報告(インベントリー会計)を行ってきた一方で、1.5度目標に向けさらなる脱炭素を進めていくには、これに加えて削減貢献量の開示(インターベンション会計)も行っていく必要があるとWaughray氏は指摘。「削減貢献量を企業のイノベーションの議題とし、企業のトランジションのための投資計画を、サステナビリティ部門の計画ではなく、サステナブルな事業計画に昇華させることが必要である」との考えを示しました。

また、金融機関においては、気候変動面からの評価を企業評価に連動していくことができるとしたWaughray氏。今後、削減貢献量の普及を図る上で、「高い基準を求めることでグリーンウォッシュのリスクを回避し、活用を進めていくことが重要」と述べ、評価の透明性が高く、厳格な開示であるべきことを強調しました。

関連企業をパネリストに迎えたディスカッション

その後、会場では異なるテーマで2つのパネルディスカッションが行われ、グラスゴー金融同盟(GFANZ:Glasgow Financial Alliance for Net Zero)などのイニシアティブや事業会社・金融機関による積極的な議論がなされました。

パネルディスカッション①:削減貢献量の今後の展望

モデレーター: Alexander Nick氏(WBCSD Senior Director)
パネリスト:
Gilles Vermot-Desroche氏 (Schneider Electric SVP Corporate Citizenship and Institutional Affairs)
Paula Cousins氏 (Weir Minerals Chief Strategy & Sustainability Officer)
Pierre-Yves Pouliquen氏(Veolia SVP Multi-Faceted Performance & Sustainable Development)
津田恵氏 (日立製作所 サステナビリティ推進本部長)

ひとつ目のパネルディスカッションでは、排出削減ソリューションに積極的に取り組む各社が、それぞれの削減貢献量に関する取組を紹介。各社とも、事業において削減貢献が重要であることを強調しました。

「2024年までの今後1年間に削減貢献に関してどのような進展を望むか?」との質問に対しては、「十分な透明性が確立されること」「削減貢献量がGHGプロトコルと並ぶ形で位置付けられるようになること」「グローバルにより多くの金融機関が削減貢献を用いるようになること」などが挙げられました。また、削減貢献量のガイダンスについては、Waughray氏が言及したように、グリーンウォッシュ回避のために高い基準を求めることは重要であるものの、同時に複雑になりすぎず、企業が使いやすいものであるべきという意見も挙げられました。

パネルディスカッション②:金融機関における削減貢献量の活用拡大に向けて

モデレーター: Marvin Henry氏(WBCSD Senior Manager, Avoided Emissions)
パネリスト:
上原宏敏氏(パナソニック オペレーショナルエクセレンス 品質・環境担当、CS担当 執行役員)
Stephanie Chow氏(GFANZ Director, Climate Finance. & Strategy)
山我哲平氏(野村アセットマネジメント ネットゼロ戦略室長)
Christopher Kaminker氏(BlackRock Managing Director, Head of the Sustainable Investment Research & Analytics (SIRA) team)

ふたつ目のディスカッションは、主に金融機関による削減貢献量活用の視点を中心に議論が行われました。

開示側の立場から意見を述べたパナソニックの上原氏は、削減貢献量の活用を促進するには①削減貢献量を算定するプロセス・条件の標準化、②削減貢献量の算定事例を業界ごとに収集・共通ルール化、③削減貢献量の積極的な開示が重要であり、これらを推進することで公正かつ比較可能な評価につながるとしました。同社は、削減貢献量の算定・開示にはいまだ不透明性が残る段階にはあるものの、WBCSDやGXリーグなどと連携しながら、積極的な算定・開示に取り組んでいることを紹介しました。

GFANZのChow氏、BlackRockのKaminker氏からは、金融機関として脱炭素社会の実現を支援するためには、ファイナンスド・エミッションのみでなく実体経済の排出量をとらえていく仕組みが必要であること、社会のトランジションに資するものに投資が進むべきであることなどが語られ、削減貢献の評価が重要なアプローチになるという認識が示されました。

セッションの締めくくりには、野村アセットマネジメントの山我氏より、同社の削減貢献量活用方法について紹介がありました。「排出量による評価は企業のリスク面での評価が主になるのに対し、削減貢献量は企業の成長機会や社会へのポジティブな影響を評価することができる」と山我氏は述べ、同社における企業評価への活用方法を説明しました(「削減貢献量 -金融機関における活用事例集-」14-15ページ参照)。今後、削減貢献量を企業評価に活用していくにあたっては、いまだデータに制約がある点に留意する必要があるとした上で、「削減貢献の算定・開示に対する透明性が高まり、多くの企業による開示が進むことで、企業評価への活用もより有益なものとして進展していく」と結びました。


閉会の挨拶に立った小林審議官は、「また来年、COP29の場でお会いできるのを楽しみにしている」という言葉で締めくくり、75分のセッションは幕を閉じました。

本イベントは、削減貢献量にグローバルな注目が高まっていることが示されたと同時に、日本政府、金融機関、企業が果たしていく役割の大きさを再認識するものとなりました。GXリーグとしても、GX経営促進ワーキング・グループの活動を中心として、削減貢献量のさらなる普及、そして企業成長と脱炭素の両立を実現するべく貢献していきます。